肛門外科
肛門外科
痔は、日本人の3人に1人がかかっているといわれるほど身近な病気です。
現在、医学的には「痔は生活習慣病である」という考えが主流になりつつあります。痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(穴痔)を三大痔疾患と呼び、痛み・出血・脱出・しこりが主な症状です。
「すぐに手術をされそうで怖い」「手術はすごく痛い」という誤解もあるようですが、現在では手術の必要な患者さんは1~2割程度です。セルフケア(生活指導)と薬剤などによる保存的治療がスタンダードとなり、手術は年々減少する傾向にあります。 欧米では手術率は数パーセント以下であるといわれております。
早く治療すれば、座薬や内服薬など薬で軽快することも多いです。内痔核は手術だけでなく、注射で治すこともできます。
早期受診こそが痔を早く確実に治す近道です。
痔核は痔の中で男女ともに最も多い疾患です。排便時の過度ないきみにより、肛門周囲の血管がうっ血し、それによって痔核が発生するとされています。歯状線を境に、「内痔核」と「外痔核」の2つに分かれます。
内痔核
歯状線よりも内側にできる痔核を内痔核と呼びます。排便時のつよいいきみなどが原因で粘膜がうっ血することで発症するといわれています。
内痔核は普通痛みがないため排便時の出血や痔核が肛門から脱出することで、初めて気づくことが多いです。
従来の手術治療に加え、硬化療法(切らずに治す)もあります。適応かどうかの判断は診察の上決定します。
外痔核
歯状線より外側の肛門の皮膚下にある静脈瘤がうっ血して腫れることで発症します。知覚過敏によって痛みを感じるケースが多いです。
痔核の治療には薬物療法と手術療法、注射療法があります。
当院では、注射療法(内痔核硬化療法)を日帰りで行っています。
女性に多く見られます。便秘や下痢などが原因で肛門の皮膚が切れたり裂けることで発症します。排便時・排便後に強い痛みを感じます。ペーパーに付着する程度の少量の出血もあります。
切れ痔を繰り返していると、傷跡が潰瘍や瘢痕化して肛門が狭窄する恐れがあります。
便秘の人は、切れ痔の治療後も再発しやすいので便秘の治療も併せて行いましょう。
歯状線のくぼみから細菌(大腸菌など)が入り込み肛門周囲に膿がたまったもので、肛門周囲が腫れて激しく痛み、発熱(38~39℃)することがあります。時には皮膚の表面から膿が自然にでてくることがあります。痔瘻の前段階となり、治療は膿を出す手術を行います。
男性に多く見られます。強い下痢などが原因で、歯状線のくぼみに便が入り込むと細菌感染によって膿がたまり肛門周囲膿瘍となります。膿がたまって皮膚の外側に進行していくと肛門付近の皮膚を貫通してトンネル状の穴が開くと痔ろうになります。トンネルの位置、深さ、向きなどにより緻密な手術を行う必要があります。トンネルから外へ膿が排出されると、発熱や痛みの症状は落ち着きます。
痔ろうはがん化する恐れもあります。またクローン病などの併発がないかを確認することも重要になりますので、内視鏡検査が不可欠です。
悩ましい肛門のかゆみ、相談できずに悩んでいる方は意外に多いと感じます。薬局で塗り薬を購入しても一時はよくなるものの再発を繰り返し悪化するケースも多いのが現状です。誤った自己判断、自己治療は危険です。勇気を出して受診してみてください。
おしりがかゆくなる病気にはパジェット病、ボーエン病、有棘細胞がん、悪性黒色腫などの皮膚がんや肛門癌の場合もあります。癌でない事だけでも確かめることは大切です。